鶴岡市内で水稲、枝豆、野菜などを栽培されている池原さんにお話をお伺いいたしました。
池原さんは元々は会社員でしたが、約20年前に専業農家へ転身し、ご夫婦で農業経営に取り組んでおられます。
鶴岡の特産「だだちゃ豆」の栽培が盛んな鶴岡市大泉地区で、地区の青色申告会の役員も務められているとのことで、農家の青色申告についての課題などもお話いただきました。
- 山形県鶴岡市で水稲や、特産の「だだちゃ豆」、野菜(ミニトマト、葉物野菜など)を栽培
- おもな出荷先はJAや、地元小売業者、学校給食など
- もともとは会社員、親御さんの農業を引き継ぎ、現在はご夫婦を中心として農業経営。
- 地区の青色申告会の役員をされている。
親の代は資産台帳が手書きで、減価償却費の計算が大変だった
SAVE:らくらく青色申告を2011年からお使いいただいていますが、キッカケは?
池原さん:手書きでの減価償却費の計算が嫌だったというのが理由で使い始めました。
私たちが親の代から替わって農業始めた最初の年、青色申告を受け継いだのですが、減価償却、資産台帳がすべて手書きだったんです。
手書きなので計算が間違うことがありました。間違えたとなると遡って確認して、修正申告をしたりすることもありました。
購入した月で減価償却費が変わってくるため1行ずつ計算していましたが、とても多くあったので行が足りず分冊になり膨大になりました。
最初はExcelで減価償却の部分だけ作って申告の際に使うことができないか検討していたんです。
その時、たまたま親戚の人がセーブさんのソフトを使っていて、うちでもそのソフトを試してみて、こっちのほうがやりやすいなと感じ購入しました。
最初に買った他社の農業簿記ソフトは難しくて先に進めなかった
池原さん:最初は他のメーカーの農業簿記ソフトを買ったんですよ。
使ってみたら難しくて、先に進めないし、聞いてもわからないし。
当時は簿記のことを知らなかったため何をどうしていいのか全く理解できなかったんです。
そこでセーブさんのソフトを2011年から使い始めたんです。主には妻がソフトで帳簿を入力し、最終的できた決算書を私が申告の際に国税庁のHPからe-Taxで申告しています。
SAVE:2011年から今まで、使ってみた感想を教えてください。
池原さん:他社ソフトは複式だったので言葉自体が理解が難しかったのですが、セーブさんのソフトは入力は単式のイメージだったので理解しやすかったです。
青申会で開催された説明会に参加して一通りの流れを見せてもらって、「これだったらできそう」と感じました。先に使っていた人から「摘要欄の入力はこういう風に使ったらいいよ」などと聞きながら画面を見せてもらったりしました。
高価な簿記ソフトでなくても65万控除は受けられる
SAVE:「らくらく」はシンプルな画面で分かりやすいのが最大の特徴で、簿記の理解度のハードルをなるべく下げられるように頑張っております。
池原さん:セーブさんのソフトは65万円控除適用になるよと、実際に使って申告していた人に聞いて知りました。
高価なソフトを使わなくても65万円控除を受けられるんだから、ぜひやったら?と勧められたこともありました。
実際に使ってみたら、初心者向けで導入しやすかったです。
手書きの申告は間違いも多い、青申会でもPCソフト利用を浸透させたい
手書きの決算書はPCソフトと比較すると間違いが多い
SAVE:青申会さんのように身近に支えてくれる存在がいると心強いですね。
池原さん:近年は税理士にお願いする農家もいますが、青申会としては全員がソフトなどを使って申告をしてくれれば楽なんじゃないかと思って話をしています。
大泉はまだ手書きが大多数ですが、他の地区の青申会のほうがPCソフトの利用率が高いようなんです。
監査のときに、手書きだと7なのか1なのか数字の識別が難しいような状況で間違いもあり、おそらく昨年の決算書に間違いあれば今年の決算書も間違いがある。
聞いたところによると、手書きで書いた決算書はソフトを使った場合と比較して間違いが多いことを税務署でも認識してるようです。
税務調査も修正申告もPCソフトなら簡単
SAVE:農家さんのところにも税務調査は来るんですか?
池原さん:来ます。実際に何年か前にうちにも来ました。うちで指摘されたのは、本来昨年に申告すべき内容が、今年の売上になっていたので修正するようにとのことでした。年をまたいで販売した野菜の代金の分です。指摘をされたのはその一箇所だけで、他にはとくに大丈夫だということでした。
SAVE:そこで簡単に修正ができるのがPCソフトのいいところですね。手書きですと修正が大変ですよね。
池原さん:何年も遡って修正するとなると、とても大変です。
そういったことを考えると青申会では会員の皆さんにPCソフトを使ってみたら?と伝えたいんです。
サラリーマンか、農家か、キャリアの選択。
夫婦が中心となり、規模を拡大してきた営農。
枝豆の生産量が増えていき、「お手伝い」の範囲を超えるように
SAVE:ちなみに農業を始められたのはお幾つくらいの時ですか?
池原さん:40手前のころですね。私たち夫婦はサラリーマンで、親が農業をしていたんです。
父もサラリーマンしながら兼業で、母は専業で、本当に小さな農家でした。
枝豆を作り始めてから次第に生産量を増やすようになって、そうすると「お手伝い」の範囲を超えるようになり会社勤めを続けながらが難しい状況になってきました。
集落で農業の会議などある場合も平日だったりで、会社員だと参加できない。
どこかでは農業か会社員かを選択しないといけないと感じました。娘が保育園だったかな、40手前だったと思います。
夏場はとにかく枝豆が忙しくて、子どもたちをちゃんと海水浴に連れて行ったこともないですし。
よその家庭のように夏休み旅行とか連れて行くこともできなかったし。
それを娘も見て育ってきたんです。いまも娘は農作業を手伝ってくれていますが。
冬場はハウスで葉物野菜を栽培、収入の確保につなげる
池原さん:専業農家になった最初の頃は、冬場は仕事がなかったのでアルバイトなどもしていました。
その後は冬場に葉物野菜を11~3月頃まで栽培して学校給食用として出荷するようになり、冬場も二人で収入が得られるようにしています。
枝豆は朝早いし、1時とか3時とか、寝ないで仕事をすることもあって、年齢が上がってくると続けるのが難しい。今後枝豆をやめたら、ハウスでの野菜栽培を増やしていくべきなのかを考えています。
青色申告で経営状況を把握し、コスト高への対応を考える。
収入保険で経営リスクに備えている。
数字が見えるから、どうやってコストをさげていこうか考える
SAVE:青色申告をすることで経営の状況が数字で見えるわけですが、そういったことは大事だなと感じられますか?
池原さん:数字が見えるから、どうやってコストをさげていこうかということを考えられます。
人件費も年々上がっていて、その分、農産物の販売価格も上がればいいのですが、それが難しい。
別のところで経費をさげていかないといけません。逆に言えば、雇用を増やすのではなく機械化するということも考えざるを得ないのです。人件費が年間これだけ掛かっているから10年間でこのくらいと計算して、その分で機械を購入するとか。
SAVE:決算書を見ながら、そういったことを検討されるわけですね。
池原さん:そうですね。
葉物野菜もいかに収量をあげていこうかなど、いろいろなことを考えます。
枝豆は他の作物でのカバーが難しい、保険は万が一の支えになる
SAVE:ずっと青申されていますが、収入保険は入っていらっしゃいますか?
池原さん:入っています。収入保険が始まった早い段階から入っています。
野菜は天候によって大きく左右され、長雨でダメになってしまうこともあって、その分の補償を考えたときには多少掛け金が高くても、加入することにしました。農家は野菜の分の損害を、他の作物でカバーしようと考えて作付けをするわけですが、
枝豆だけだと、どうにもカバーが難しいのです。なるべく収入が落ちないように経営努力をしているのですが、保険は何かあったときのための支えになります。
こまかな農協の営農指導
SAVE:今年も高温の影響はありそうですね。
池原さん:ミニトマトは昨年高温の影響がありました。ミツバチを使って受粉をするのですが、ハウスの中は気温50℃にもなって、蜂が飛べないんです。8月の時期は小さな実しか成らなくて、収量は例年の半分でした。そういうことが近年多いんです。うちは枝豆も植えているけど、バケツをひっくり返したような大雨が降ることもあるし。
SAVE:心配ですね。農協では営農指導担当の職員さんが圃場を見て指導などするのでしょうか?
池原さん:農協の営農指導は勝手に圃場のようすを見回りして、「こうしたほうがいいよ」と電話をくれます。
農協の職員はその際に写真を撮ったりしてくれているので、収入保険の関係でNOSAIに送ってほしいと頼むと連絡してくれたりします。
鶴岡の特産「だだちゃ豆」、
面積を増やしたいが、人手不足が一番の課題。
機械化していくことで、年々減価償却費が上がっていく傾向にある
SAVE:ちなみに栽培している作物は水稲のほかに野菜ですか?
池原さん:野菜は枝豆、ハウスでミニトマト、冬場はハウスで小松菜です。あとは水稲。全部で10haくらい。豆が4割、コメが5割くらいです。来年は豆の作付けを増やさなければと思っているのですが、人手不足が一番のネックです。年々厳しくなっている。年々、高齢でやめていく人が増えていて、自分たちの世代に農地を託されることが増えています。
豆だって面積が増えても、ある程度は機械化していくことで対応できるんです。
普通は年々減価償却費が下がっていくんですが、若い人たちは機械化に頼らざるを得ないので、年々減価償却費が上がっていく傾向です。
繁忙期はシニア層の働き手が活躍
SAVE:枝豆はアルバイトの方もいるんですか?何名くらい?
池原さん:就農当初は1~2名でしたが、いまは20名くらいはいます。
定年後の65~70歳くらいの方々が多く、1日に3~4時間の短い時間を無理のない範囲で働きに来てくれています。外の仕事、中の仕事、いろいろあるので6~7人グループになって入れ替わりで、一日20名くらいはいます。本当はもう少し増やしてミニトマトの管理などお願いしたいところですが、なかなか人が集まらないんです。
なので、我々夫婦が枝豆の作業を終えたあと、夜間にミニトマトの仕事をするわけです(笑)
SAVE:そのようなお忙しい時期にお伺いして申し訳ありません(笑)
自身の経験から振り返る、就農の難しさ
池原さん:我々夫婦がメインで、子どもたちはサラリーマンで農業はやっていないので、これがいつまで続けられるかわかならい状況です。自分たちも農業を始めたころは躊躇もあったので、それを考えると親としては子どもに無理に事業承継して欲しいとは思いません。
農業って簡単なことではないですからね。農家の仕事は朝早いし、経費が掛かって儲からないかもしれないし。
もしも仮に、子どもが将来に農業をやっていくとしたら、本人の中に法人化したいとか何かビジョンがあるならば、勧めるし、親として協力もしていきたいと思います。地域農業でも若い人がやっていれば応援するけど、やっぱり大変です。
会社員が楽だとは思いませんが、農業は自分で経営してご飯を食べていかないといけないので。
SAVE:ご経験から大変さを理解しているからこそ、安易に就農を勧めることはなかなかできないということですね。
「青申会の会員が楽に申告できるようになればと願っています。」
勉強会を続け、PCソフト利用率を高めたい
SAVE:青申会の役員をされているそうですが、今後の青申会さんとしての展望などありますか?
池原さん:勉強会は今後も続けたいと考えています。できるだけPCソフトを使って青色申告する割合を増やしていきたいです。PCソフトでもっと楽に、自動計算で正確な申告を行い、65万円控除を受けられるようになればと思います。
複合経営であれば、部門ごとにしっかり数字を把握することも必要でしょうが、水稲だけなら比較的簡単にできる。
仕訳が難しいのかなと見受けられる人も多いんですが、「らくらく青色申告」なら最初に登録さえしておけば簡単に入力できますし間違いがない。
できるだけ会員が楽に青色申告ができるようになればと願っています。
SAVE:もし私たちがお手伝いできることがあれば、ぜひお声掛けください!
大変貴重なお話を聞かせていただき、どうもありがとうございました!