鶴岡市櫛引地域で農業を営む、お二人の農家さまにお話しをお伺いいたしました。
櫛引地域はフルーツタウンとして知られており、さくらんぼ・葡萄・柿・桃・梨・りんご等、果樹の栽培が古くから盛んな地域です。農産物の販売拠点として1997年オープンしたのが「産直あぐり」です。
現在社長として産直経営を担う鈴木さんと、産直の会員生産者の佐久間さんに、青色申告や地域の農業を取り巻く様々な課題についてお聞きしました。


水稲・果樹(ぶどう)など栽培。
会社員時代を経て農業へ。4年前より経営移譲。
事業承継、営農と青色申告
SAVE:佐久間さんはずっと農業をされていたのですか?
佐久間さん:若いころは会社勤めをしていました。会社員時代は農繁期だけ農業を手伝う程度で。
SAVE:佐久間さんは事業承継されて農業されているそうですが、ソフトはそのときからお使いいただいているのでしょうか?
佐久間さん:4年前です。その前は父が手書きで青色申告をしていました。
一番簡単なソフトで簿記がわからなくても使えると紹介された
SAVE:セーブのソフトはご紹介等で?
佐久間さん:何かいいソフトがないかを鈴木さんに相談して紹介してもらいました。
鈴木さん:取っ掛かりとしては一番簡単ですし、簿記もなにも分からなくても、単式で入力すれば複式で計算されるし。
佐久間さん:最初はどこに何を入力するのかわからず、教えてもらったりしました。1回やるとこんな感じかなと理解しますが、でも年1回しか使わないので使い方を忘れてしまいます(笑)
SAVE:ちなみにソフトの中にある「使い方ナビ」のボタンはご利用いただいていますか?
佐久間さん:消費税の入力をする際に利用しました。どこに何を入力するのかを見ながら、参考にしました。
SAVE:使っていただき、ありがとうございます。お役立ていただければ有難いです。

e-Taxで青申の最大のメリット65万円の控除を受けている
SAVE:お二方とも青申は65万円控除を受けているとのことでしたが、ということはe-Taxで申告をされているのですね?
e-Taxは国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使って申告されていますか?
鈴木さん:前にe-Taxソフトを使って連動してやろうとしたけど、e-Taxソフトの使い方がよくわからなかった。
SAVE:e-Taxソフトの使い方がわからないと、他の方からもよくお聞きします。
鈴木さん:e-Taxソフトでなくても、「確定申告書等作成コーナー」のほうで十分。マイナンバーカードであればスマホで読み取って出来るし。もっと簡単になったのは医療費などはマイナンバーに紐づけされていて、本人分であれば自動的に反映されている。
SAVE:消費税の申告は必要でしたか?
佐久間さん:経営移譲からの3年間は消費税の納税がなく、その次の年から納税事業者になり、税務署に聞いたところ簡易は前の年から申し込まないといけないと言われたため、一年間だけ一般課税で申告し、翌年からは申込をして簡易課税で申告しました。
SAVE:インボイスの発行事業者の登録をされているそうですが、一般課税の場合は、インボイスを受け取ったかどうかを入力してもらうことが必要になるのですが、簡易課税であれば今までと変更はありません。

2023年の酷暑の影響、共済・収入保険での備え
SAVE:収入保険には入っていらっしゃいますか?
鈴木さん:はい、私は入っています。
佐久間さん:私は入っていません。収入保険って、実際にもらうときに面倒なことになりそう。これは適用になるとか、ならないとか、ありそう(笑)
鈴木さん:いや、これは評価するとかしないとか無いから(笑)それは基準は数字が全てものを言うから、逆に安心(笑)
収入保険の場合は加工などを除いたりするけど、仕入など一切関係なく農産物の売り上げだけを補償対象にしているから、補填の割合が高い。自分は去年もらったけど、ただ保険金が下りるまで少し時間がかかった。
今年は特に収入保険に入っていないと大変なことになる。水稲共済では該当にならないから。
SAVE:そうなんですね。
鈴木さん:水稲共済では品質と収量と両方の補償されるのがあって、そういったものに加入していればいいけど。施設関係・カントリー利用とか個人で調整している人たちは大体入っていないと思う。
佐久間さん:自分も共済に入っているけど、詳細をよく分かっていない。
SAVE:今年は量はとれているけど、品質が良くないというのもニュースなどで耳にしますが?
鈴木さん:収量もないかも。粒が大きくならなかったから、途中で成長が止まった感じ。籾カサは大きいけど、調整してみたら入っていないのも結構ある。地域によるだろうけど、この辺はあまりよくないみたいです。
こんな機能がほしい!セーブに要望など
佐久間さん:請求書や納品書、領収書を連携できる、レシート読み込みができるという機能が欲しいと思っています。
SAVE:販売管理機能も必要ということですね?
佐久間さん:オプションでもいいから、あったら便利だと思う。
鈴木さん:農協や市場出荷だけだと今のままでも十分だが、我々のように顧客へ直接販売のある農家だと二度手間になるため販売管理機能も必要だと思う。
佐久間さん:日々、伝票を出す際もPCを開くよりスマホで入力できれば非常に簡単です。納品書を登録したら帳簿に反映される連携があったほうがいい。
果樹栽培と高齢化の影響
SAVE:サクランボは高齢の生産者さんが年々栽培をやめていると聞きますが、あぐりの会員でも年齢的な理由でやめる方がいますか?
鈴木さん:いますね。後継者がいなくてやめています。どこでリタイヤを宣言するかが同じ農業でも作る作物によって違ってきます。田んぼだと結構引き受けてくれる人がいるんだけど、枝物はそうはいかない。機械化が進んでいないものだから、ひとつひとつが手作業。
SAVE:栽培のスキルなど属人化していることも影響するのでしょうか。
鈴木さん:工業製品のようにロボット作業ができればいいんでしょうけど。葡萄を作るにしても人房に何粒ないといけないとか規定があるわけで、全部自分たちでハサミを入れて調整しないといけない。結局は手数。そうなると一軒の農家で栽培できる面積も決まってくる。
佐久間さん:サクランボと違って葡萄は棚の高さが同じで、いまは作業車を使っているため、ある程度高齢でも仕事はできるけど。
鈴木さん:作業車があれば座ったまま仕事できるから。椅子に座ったまま移動もできる。脚立の上り下りがないから前よりは楽になったと思う。

お客様ニーズの変化、産直販売での対応
SAVE:鈴木さんは産直あぐりの社長もされているわけですが、生産者でもある。佐久間さんも生産と販売の両方をされていらっしゃる。
お二人とも両方の立場から、農業についてお客様のニーズが変わってきたなと感じることはありますか?
食べ切れる量・サイズを求められる
鈴木さん:ニーズは変わってきていますね。あまり量をいっぱい食べなくなった。昔はりんごは大きい方が喜ばれたが、今は一度で食べきれるサイズのほうがいいと言われる。贈答用であれば大きくて見栄えのいいものを選ぶけれど、自分で食べる分は食べ切れるサイズがいいのだと。
これから柿のシーズンですけど、地元の人は贈答なら大きい箱でいっぱい送ってあげたいと思うけれど、もらった方は日持ちしないから食べ切れないと。SDGsの観点からも食べ切れるサイズ・量を皆さん求めている。
だから米袋も10kgよりは5kg、3kg、2kgと小分けになっているのを買い求める消費者が多くなっていると感じます。
佐久間さん:とくに米は、最近になってTVとかの媒体で取り上げるようになって「保存食ではないんだよ」っていうことが知れ渡ってきたと思います。30kg袋でドカンっと買うのは家族が多い家庭だけで。
鮮度を保って美味しく食べようって思っている人は精米したてを少量ずつ買う。


毎年、葡萄を買い求めに農園を訪れるリピーターも
SAVE:佐久間さんの農園は観光農園はやっていないんですか?
佐久間さん:観光農園はやってはいないのですが、直売をやっているから、毎年来てくれて販売をしています。
直接買いに来たお客様が自分で葡萄をもぎたいと要望があれば対応することもあります。
常連のお客様は自分でカゴをもって、好きな葡萄を獲って「はい、これ頂戴」という感じで買われていきます(笑)
週一で来る人もいます。一番多いのは、庄内の地元の方です。ほかには隣県から来られます。
鈴木さん:だいたい皆さん自分のお客様を持っています。最近は皆さん真っすぐ畑に買いに行く人が多いようです。
佐久間さん:とくに看板はあげていないですけどね。
SAVE:佐久間さんは今後、販路拡大とか展望はありますか?
佐久間さん:一人でやっているから販売先を増やしても処理ができないんです。
鈴木さん:面積が増えれば増えるほど小回りが利かなくなりますからね。
佐久間さん:前はネットで米を売っていたんですが、発送・梱包の手間が尋常じゃないくらいかかるから、徐々に減らしていって、それでもまだ取引している人には今も直接販売はするけど、オープンに販売はしていないんですね。
価格的には、特別なにか付加価値をつけられる訳でなければ、産直に出荷するのと同程度になるから。

産直でお馴染みの手づくり加工品も、高いハードルが!
SAVE:あぐりさんは加工品を販売する方も多いですが、最近の傾向になにか変化がありますか?
鈴木さん:梅干し・ジャム・ジュース、ドライフルーツ、お菓子、漬物など、昔はお母さんたちが自分で出していたんだけれども、HACCPとか食品衛生の法律が変わって届け出制になり、ルールに則った製造が求められるため、それでやめた人が多い。高齢の方々は厳しい衛生管理基準だとかについていくのが難しい。きちんとした施設を持って、届け出をして、管理資格をとってやっている人が今は販売の土俵に乗れるのであって。ジュースの加工も手間がかかるものだから、原料をあぐりで買取り、あぐりのブランドで加工して売るというのが増えてきている。

産直の今後、次の世代へ繋がる農業
SAVE:ちなみにあぐりさんでは今後の販売の拡大の展望などはありますか?ネット販売とか。
鈴木さん:ネット販売、ふるさと納税、さまざまなチャネルで売っていこうとしています。
東京での出張販売もやっています。異常気象でモノが揃わなくなってきています。そのためサクランボは今年から予約販売をやめています。なかなか戦略的に売りたいと思っていても商品が揃わない。
産直会員の増強が一番の課題
鈴木さん:いま一番の課題は生産者の確保です。会員さんをどんどん増やして若返りを考えていかないと。
ベテランにも頑張ってもらいながらも、次のことを考えると、若い世代の後継者がいないことには、店も地域も生き残っていけないから。
この間も経済紙に2050年には農業者が8割いなくなると書かれていたけれど、食料安全保障の観点からも、国が農家を保護していかないと難しいと思います。本当に自分だけでやっていける農家というのは、ほんの一握り。みなさん、一生懸命に知恵をしぼってやっていますから。

